神戸市看護大学のルーツからの変遷を辿ると、1924（大正13）年に開設された市立神戸診療所内に1926（大正15）年に市立神戸診療所付属看護婦養成所が開設され、1950（昭和25）年に神戸市立看護婦養成所、1959（昭和34）年に神戸市立高等看護学院、1981（昭和56）年に市立看護短期大学、阪神・淡路大震災の翌年1996（平成8）年に神戸市看護大学として開学し、この2026（令和8）年に100年を迎えます。その間、優秀で実践力のある看護師や教育研究者を輩出してまいりました。
わが国は急速な少子高齢社会が進み、時代の変遷とともに疾病構造も変化し、病気は治す時代から治し支える時代になってきました。また、新型コロナウイルス感染症の流行、能登半島地震など社会が変動・変化する中、看護職には高い専門性・国際性とともに、豊かな教養に裏付けられた人間性が求められています。
大学には、知的創造活動の中核として、地域の未来・医療を支えるという重要な役割があります。理事長として大学の進むべき方向や経営方針を明確に示し、開かれた質の高い、スピード感ある運営を進めていきたいと考えています。社会や地域の役に立つ未来志向の大学として、さらなる発展に努めてまいります。
本学におけるこれまでの創基100年、開学30年の成果は、卒業生・修了生の皆さまをはじめ、学生、保護者、教職員、地域や本学に関係する皆さまのご理解とご支援によって成し遂げられたものであり、深く感謝申し上げるとともに、これからも神戸市看護大学は、皆さまの誇りとなる大学を目指していく所存です。
今後とも、神戸市看護大学に皆様のお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

神戸市は、明治時代中期から港湾都市として国内外から多くの人々が集まり、経済的にも発展していましたが、感染症の流行や労働者の健康問題など、医療面での課題も増加していました。これらの課題に対応するため、看護師の養成が重要視されるようになり、神戸市は自前の医療人材を育成する必要性を感じ、1926年に市立神戸診療所に付属する形で看護婦養成所を設立しました。ただし当時の看護婦は病院が常傭する女子の付添人で、職分として確立されておらず、系統だった教育課程はありませんでした。
終戦後、1946年にGHQ主導で看護教育制度が刷新され、1948年には現在の制度の元になる「保健婦助産婦看護婦法」と「保健婦助産婦看護婦養成所指定規則」が制定され、正看護婦、准看護婦の職分が明確化され、教育課程の整備も行われました。それに応じて市立神戸診療所付属看護婦養成所も、1953年には「神戸市立准看護婦養成所」に名称変更しました。その後、神戸市立中央市民病院の布引への移転とともに、医療の高度化に対応できる正看護婦の養成ニーズにより、病院に隣接する形で、1959年に神戸市立高等看護学院が開設されました。
その後、高度経済成長の進展による、さらなる医療の高度化や健康問題に対応できる高度な知識と技術をもった看護婦を育成するため、1970年代から全国で看護短期大学が設立されるようになり、神戸市でも学校教育法に基づく看護基礎教育の必要性が認識され、1981年には神戸市立看護短期大学が設立されました。その後は高齢社会の進展に伴い、看護基礎教育のさらなる充実が求められ、全国的にも４年制看護大学設置の必要性の認識が高まり、1996年に神戸市看護大学が開学し、2019年には公立大学法人へ移行し、現在に至っています。
本学は、上記のような神戸市の看護教育の歴史の上に成り立っており、それを支えてこられた数多くの人々の思いが込められて、今が存在しているということを、改めて感じています。その歴史の重みを大切にしながら、本学で学ぶ学生たちが高度な看護の専門知識と技術を身に付けるとともに、人間性豊かな看護職者として成長し、地域の健康問題への対応とグローバルな視野をもって考えることができ、これからの時代の変化に柔軟に対応できるように、ますます充実した教育をおこなっていかなければならないと、この記念すべき節目にあたって決意を新たにしています。
これまで神戸市や本学の看護教育にかかわってこられた数多くの皆様方のご支援に深く感謝を申し上げますとともに、今後とも、神戸市看護大学のさらなる発展に向けて、引き続きご支援を賜りますように、よろしくお願い申しあげます。